イサム・ノグチは彫刻だけではなくモニュメント、庭園や公園などの環境設計、家具や照明のインテリアから舞台芸術まで、幅広い活動を行った20世紀を代表する多才な芸術家。晩年、香川県の牟礼町にアトリエと住居を構え、1969年から20余年の間、NYとこの地を行き来しながら作品を制作されました。
1999年に開館したイサム・ノグチ庭園美術館は、150点あまりの彫刻作品、ご自身が選んで移築した展示蔵、作業蔵、石壁サークルを中心としたアトリエ、住居イサム家、晩年制作した彫刻庭園によって構成され、全体が一つの大きな環境デザインとなっています。この地が未来の芸術愛好家たちのインスピレーションの源泉になることを強く望んでいた彼の遺志をもとに、可能な限り生前の雰囲気そのままに整備し公開されたものです。
蔵の土間や石壁サークル内は箒の目が残るよう美しく掃き清められており、思わず姿勢を正したくなるような静謐な佇まいで、ノグチさんの気配を感じられるような特別な空間でした。スタッフの方の説明もとても興味深く印象に残るものばかり。外国からいらした方々もそれは熱心に見学されていました。ただ見学時間が1時間ほどしかないのが…(;;)
イサム家の裏の彫刻庭園は、もとは段々畑だったところに盛り土をして造成されたものだそうです。庭園上部に設けられた築山の頂にはノグチさんお気に入りの自然石が置かれており、屋島や五剣山、瀬戸内海の美しい景色を一望することができます。その自然石と屋島などの背景はまさに彫刻作品。ここから眺めや、桜の木の下にある石舞台に腰を掛け過ごす時間は至福のひと時で癒されます♪
明治の酒蔵を移築した展示蔵には代表作「エナジー・ヴォイド」や「真夜中の太陽」などの大作も展示されています。庭園美術館内はすべて撮影禁止のため、画像はパンフレットと購入した写真集とポストカードの一部です。
五剣山を遠景とした、マルと呼ばれた石壁サークルの外にあるこの場所のみが撮影可能なスポットです。
庭園美術館近くの公園や広場ではイサム・ノグチの遊具彫刻を楽しむことも。
黄色と茶色で彩られた曲線の遊具はプレイスカルプチュア、奥の六角形の面と三角形の面をあわせた八面体の赤い彫刻はオクテトラです。日常生活の中にアートを持ち込むエレメントとして遊具をとらえていたイサム・ノグチの代表的な作品で、この旅行中にサービスエリアや公園などでも見かけました。
これは、あの子どもたちの世界。
私が創造したものを子どもたちに発見してもらいたいのです。
そして、ちょうど原始、人がしたように、
子どもたちにも直接、大地と向き合ってもらいたいのです。
イサム・ノグチ