香川県立東山魁夷せとうち美術館は、日本画家・東山魁夷画伯の祖父が坂出市櫃石島の出身で、香川県とゆかりが深いことから東山家より寄贈を受けた版画作品270点余の作品を収蔵・展示するために、2005年に開館した美術館です。
建物は美術館建築で名高い谷口吉生さんの設計。瀬戸内海側とオリーブなどの植栽が施された公園側を隔絶するように、2枚の大きな壁が東西に貫いているのが特徴です。2枚の壁を覆っているのは緑色のアメリカ産スレート(バーモント・グリーン)です。
アプローチは建物に対して斜めに振られおり、エントランスに向かってまっすぐに伸びています。海は建物で遮られ、近づいても見えにくいように配置されています。
受付左側にある入口より、壁面の高さが6mほどある1階の展示室へ。ここから階段を上り、東西に長く延びた2枚の壁に挟まれた2階の展示室を通り抜けます。1階へ降りると、ラウンジの大きな窓からは光に満ちた瀬戸内海が開けます。まったく海を意識しないまま館内を導かれ、作品を鑑賞した後に突如として眼前に広がるパノラマのような光景、ドラマティックな演出に驚かされます。
瀬戸大橋が橋脚をおろしている一番岡山寄りの島が、魁夷の祖父が生まれ育った櫃石島(ひついしじま)だそうです。瀬戸大橋の色は、魁夷さんが「景観を壊さない色を」と提案した「ライトグレー」が採用されています。
絶景カフェを貸し切りで♪立ち去りがたい素敵な空間です。
ガラスのジョイント部は手前にある細い柱で目立たないように隠され、床のタイルも内部と外部の目地が通って、細部まで美しい仕上がりです。
同じ香川県にあるMIMOCA(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)は、誰もが気軽に立ち寄れるアクセスのよい駅前にありましたが、こちらは最寄りの駅からはバスかタクシーを利用し20分ほどの立地です。思い立ってすぐ気軽に行ける場所ではありませんが、わざわざ時間をかけてでも訪れたい美術館です。
美しい東山魁夷さんの作品と谷口吉生さんの建築、穏やかな瀬戸内の風景と静かに流れる時間に心が癒されました。
美しい空間でいい作品を見て、新鮮な刺激を受けて心が元気になれる場所… MIMOCAと同様に、東山魁夷せとうち美術館もまた「美術館は心の病院」ですね♪
外壁に用いたバーモント・グリーンのスレートは、谷口さんの代表作、豊田市美術館(1995年開館)にも使用されています。
こちらは乳白色のガラスとバーモントグリーンの組合せが印象的。建物が見えてきてからのアプローチは、建物正面に向かって真っすぐなものとなっています。