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TopNote花鳥風月錦秋に染まる揚輝荘・聴松閣(1)

錦秋に染まる揚輝荘・聴松閣(1)

江戸時代より月見の名所として名高い覚王山の高台に佇む揚輝荘。街ナカ駅チカの好立地にありながら、美しい紅葉と優雅でレトロな建築物の調和を愉しめてしまうという贅沢な紅葉狩りの穴場スポットです。揚輝荘の名前は、この地が月見の名所であったところから、漢詩の一部「春水満四澤、夏雲多奇峰、秋月、冬嶺秀孤松」からとられたそうです。



揚輝荘は大正から昭和初期にかけて松坂屋初代社長である15代伊藤次郎左衛門祐民さんによって建てられた別邸で、名古屋の近代における郊外別荘の代表作です。約1万坪の広大な敷地の中に、地形や自然を活かした池泉回遊式庭園などが配され、最盛期(昭和14年頃)には30数棟に及ぶ建物があったそうです。


1階展示室にあるジオラマ:下の赤い建物が聴松閣、上の煙突のある建物が伴華楼、中央には今は現存しない有芳軒やテニスコート、温室、弓道場なども見て取れます。

園遊会や観月会、茶会などが開催され、皇族や政治家、実業家、文化人など各界の名士が訪れ、迎賓館、社交場として華やいでいました。アジアの留学生の寄宿舎として国際的な交流の場でもあったそうです。
その後、空襲による被害や風雨による老朽化、GHQによる接収や返還、松坂屋社員寮、常盤女学院の寮としての使用、土地開発など…移ろう時の流れと共に敷地と建物の多くを失いました。現在では庭園は南北に分断され、敷地の中央にはマンションが建設されていますが、残された貴重な歴史的建造物と庭園には華麗で優雅な時代の面影が感じられます。

平成19年に名古屋市に寄付され暫定公開されるようになり、順次修復整備がすすめられています。平成20年には5棟の建造物(聴松閣、揚輝荘座敷、伴華楼、三賞亭、白雲橋)が市指定有形文化財に指定されています。平成25年には第一期整備である聴松閣の修復整備工事が完了し、地域の歴史や文化を伝える施設として市民に一般公開されました。

今年の紅葉の見頃は過ぎてしまったかもしれませんが、揚輝荘ではスタッフの方がとても詳しく建物や庭園を解説しながら案内してくださる定時ガイドがあるんですよ。
四季折々愉しめる素敵なところですので、まだいらしてない方はぜひ一度ご見学なさってくださいね。

詳しくは 揚輝荘HP をご参照ください。


令和になって初めての揚輝荘の秋の彩り、よろしければご覧になってください。まず、こちらは南園。南園には回遊式の枯山水石庭の南庭園、市指定文化財の聴松閣と揚輝荘座敷が残されています。

聴松閣

 
昭和12年に竣工した聴松閣は、べんがら色が印象的なハーフティンバーの外壁など山荘風の外観をした迎賓館です。デザインは上高地の帝国ホテル訪れた祐民さんが、ホテルの外観をお気に召して参考にされたそう。内部は洋風、中国風、インド風様式など、祐民さんが外遊された際の感動を反映し、再現したといわれる遊び心溢れるミックススタイルです。


祐民さんが中国で購入していらしたといわれる南北朝時代の虎の石像。

<玄関>

扉は製材されたケヤキの無垢1枚板が伊藤家に送られた際に墨で書かれた宛名書きをそのまま表札代わりの意匠として採用されたとか。

無骨な玄関ドアと扉周りの繊細な透かし彫りなどの装飾の対比が個性的です。

玄関の壁上部にはシックなモザイクタイルと照明器具が。土間は大小の丸太を輪切りにし、年輪を見せた小口の寄木を敷き詰めた凝った意匠です。

<旧居間>

居間として使用されていたお部屋の暖炉。黄色く見える目地は金箔が使用されているそうです。

<旧サンルーム>
この半八角形の出窓は、度重なる改築で失われていましたが、当時の写真や痕跡をもとに復元されたもの。


床材の意匠。

<旧食堂>

様々な意匠が施されたこの山荘風空間で晩餐会が開催されました。暖炉には有名寺院などの発掘古瓦がはめ込まれており、東寺や西寺、善光寺などの文字が読み取れます。

木材の表面に手斧(ちょうな)で化粧を施した名栗と呼ばれる技法が各所に用いられていますが、食堂の梁や板壁、無垢床材にもこのような彫りが施されています。フローリングの中央部分(画像暖炉の下辺り)にはヒーターボックスが組み込まれて。床暖システムの先駆けですね。

板壁部分は幅の異なる板を斜め貼りに、床材はランダムに彫りこむことでリズム感を演出しています。


飾り棚上部の「いとう」の文字は、松坂屋さんの前身いとう呉服店の店舗に掲げられていた商標デザインを模した透かし彫りです。


(食堂の窓より)テラスの床にはガラスブロックが埋め込まれ、地階の明り取りになっています。

錦秋に染まる揚輝荘・聴松閣(2)へ続きます。

この頁は揚輝荘HP、館内キャプション、スタッフの方から伺った解説を参照させていただきました。